2012年にレンズフィルターの価格による違いというエントリーを書いたのですが、このエントリー、自分のブログのなかでは一番アクセス数があり、今でもちらほらと検索エンジンからたどり着いてくれる方が…。エントリーを書いた日からは2年以上経過していることもあり、新たな製品も登場していますので、自分のなかで情報を整理する意味もこめて書き直し てみます。今回は保護フィルターに関してです。
レンズ保護フィルターとは
レンズ保護フィルターとはレンズの先端に装着するフィルターのことで、その目的はレンズ保護にあります。レンズの前玉に保護フィルターを付けてあげることで、レンズの前玉の傷が付くことを防ぎます。保護フィルターは傷付いても買い替えることが出来ますが、レンズはそうはいきません。
Kenkoやmarumi(マルミ光機)、HAKUBA(ハクバ写真産業)、各種カメラ・レンズメーカーがレンズフィルターを販売しています。
CanonやNikonなど、カメラメーカーが販売する保護フィルターはKenkoやmarumiなどが製造したOEM品ではないかとされています(HAKUBAも以前はmarumiから供給を受けているOEM品ではないかとされていましたが、2014年に発売された高級レンズ保護フィルターULTIMAあたりは、KenkoやmarumiのOEM品ではないのかもしれません)。
というわけで、保護フィルターは基本的にKenkoかmarumi、あるいはHAKUBAから選ぶことになります。フィルターとレンズとロゴを揃えたい!という気持ちがなければ、選択肢が少なく、性能が表記されていない純正品やツァイスなどの保護フィルターを購入する必要性はありません。
例えばNikonから販売されているφ77mmの保護フィルターはAmazonで4490円ほどで購入出来ます。同グレードと思われるKenko製のMCプロテクターNEOの77mmは3690円です。
フィルターメーカーの方が同グレードなら安価ですし、どうせお金を払うのであればロゴではなく、性能に!と思うのであれば上位グレードの選択肢のあるフィルターメーカーに行き着くというわけです。
それではKenko、marumi、HAKUBAから販売されている保護フィルターを見ていきます。尚、今回は保護フィルターを対象のみとし、UVカットフィルターに関しては含んでいません。
Kenkoのフィルターのスペック一覧。
まずはKenkoのフィルターから。Kenkoは主にHOYAから硝子材の供給をうけているそうです。ネットの知恵袋的なものがソース元なので確証はありませんが、これはグループ企業なので、おそらく間違ってはいないと思われます。
保護フィルターに関して、Zéta Quintシリーズ、Zetaシリーズ、PRO1D plus プロテクターシリーズ、MCプロテクター NEOシリーズの4グレード販売しています。前のほうからグレードが高く、高級品です。
Kenkoに関するフィルターに関してまとめた表がこちらです。
Kenkoプロテクターフィルターのスペック一覧表 |
面反射はガラス面における反射率のことで、低ければ低いほど画質への影響が無くなります(反射率が低ければ、より光が透過し、レンズに入っていくということ)。
強化ガラスは、ガラスに強化ガラスを採用しているかということです。光学ガラスに熱処理を加え、通常のガラスの約3倍の強度を実現しており、万が一破損しても破片が細かい粒子になるため、大きな怪我や事故を防ぐそうです。
ジュラルミン枠はフィルター枠にジュラルミンを採用しているかということです。一般的なフィルターが採用しているアルミ枠より高い強度を持つそうです。ジュラルミンはアルミに様々な種類の元素を加え、熱処理を加えたアルミ合金です。歪みにくく、外的要因による圧力からガラスを守り、ガラスの平面性を維持するそうです。
防汚コートは水滴や指紋が付着しづらく、付着しても簡単に拭き取れるコーティングが施されているかということです。Kenkoではダストフリーコートと呼ばれています。
外周墨塗りはフィルターガラスのレンズ外周に墨塗り加工を施されているかということです。内面反射を防止し、フレアやゴーストの発生を軽減する効果があります。
薄枠はフィルターそのものが薄型なのかそうでないかです。広角レンズに装着した際のケラレを防ぎ、フィルターそのものが薄いので透過率が向上するそうです。
専用ケースはフィルターの保管や持ち運びに便利な専用ケースが付属するか否かです。
ローレット(滑り止め)加工はフィルターの外周に溝を掘る加工を施されているかということです。フィルターの着脱が行いやすくなります。
77mmの価格はAmazonの価格を表記していますが、Zetaプロテクターのみ、現在Amazon.co.jpで取り扱っていないようでしたので、マーケットプレイスの価格を表記しています。
ちなみにPRO1D plus プロテクターシリーズ、MCプロテクター NEOシリーズに関してはシルバー枠が用意されており、ミラーレス一眼のレンズに多いシルバー色のレンズに色で対応しています。
また、グロス カラーフレームフィルターシリーズに関してはPRO1D plus プロテクターの旧製品であるPRO1Dプロテクターと同程度の性能だそうです。PRO1D plusとPRO1Dの差がわかりませんがPRO1D plusが面反射0.5%という表記に対し、PRO1Dが透過率99%なので、0.5%ほど反射率が下がったということなのかと思いきや、Kenkoの2014年11月カタログを見るとPRO1Dの面反射も0.5%と表記されているんですよね。まあ、素人がわかるほどの差はないのかもしれません(´・ω・`)
marumiのフィルターのスペック一覧。
続いてmarumiフィルター。marumiは硝子材を旭硝子など国内外からの調達しているそうです。ネットの知恵袋的なものがソース元なので確証はありません。
marumiは保護フィルターに関して、EXUSシリーズ、DHG SUPERシリーズ、DHGシリーズの3グレード販売しています。前のほうからグレードが高く、高級品です。
marumiに関するフィルターに関してまとめた表がこちらです。
marumiプロテクターフィルターのスペック一覧表 |
Kenkoのスペック表と対応させたかったのですが、各社謳う機能が異なっているので、微妙に表そのものが異なっていることに注意してください。
面反射はガラス面における反射率のことで、低ければ低いほど画質への影響が無くなります(反射率が低ければ、より光が透過し、レンズに入っていくということ)。 marumiはEXUSシリーズを除き、反射率や透過率に関して言及していません。
強度向上は、薄型設計のまま、画質の劣化を防ぐ平面度持ち、より強くレンズを護り抜くために強度を向上させたフィルターガラスが採用されているかということです。
帯電防止は静電気による微細なチリ・ホコリが付きにくく、ついてもブロアー等で容易に吹き飛ばせるコーティングが施されているかということです。
撥水・防汚は水滴や指紋が付着しづらく、付着しても簡単に拭き取れるコーティングが施されているかということです。
遮光線は枠内側に遮光線を施されているかです。乱反射によるフレア・ゴーストを軽減し、画質劣化を防ぎます。
外周墨塗りはフィルターガラスのレンズ外周に墨塗り加工を施されているかです。内面反射を防止し、フレアやゴーストの発生を軽減する効果があります。
薄枠はフィルターそのものが薄型なのかそうでないかです。広角レンズに装着した際のケラレを防ぐ効果があります。
専用ケースはフィルターの保管や持ち運びに便利な専用ケースが付属するか否かです。
ローレット(滑り止め)加工はフィルターの外周に溝を掘る加工を施されているか否かです。フィルターの着脱が行いやすくなります。
77mmの価格はAmazonの価格を表記しています。
marumiのMy Colorフィルターシリーズは基本的にはDHG スーパーレンズプロテクターと同じスペックです。
HAKUBAのフィルターのスペック一覧。
最後にHAKUBAフィルター。HAKUBAはULTIMAシリーズに関してはCORNING社のガラスの採用しており、SMC-PROシリーズについてはSCHOTT AG社のガラスを採用しているそうです。その他は情報が見当たりませんでした。
HAKUBAは保護フィルターに関して、ULTIMAシリーズ、XC-PROシリーズ、SMC-PROシリーズ、その他という分け方をしています。その他の中にはWPCワイドMCレンズガードフィルターシリーズ、SMCPワイドレンズガードフィルターシリーズ、ワイドMCレンズガードフィルターシリーズ、MCレンズガードフィルターシリーズの4種類があるので実質7グレードあることになります。
HAKUBAに関するフィルターに関してまとめた表がこちらです。
marumiプロテクターフィルターのスペック一覧表 |
Kenkoやmarumiのスペック表と対応させたかったのですが、各社謳う機能が異なっているので、微妙に表そのものが異なっていることに注意してください。
面反射はガラス面における反射率のことで、低ければ低いほど画質への影響が無くなります(反射率が低ければ、より光が透過し、レンズに入っていくということ)。
光学ガラスは、フィルターに使用されるガラスが工業用ガラスではなく、レンズなどに使われる光学ガラスが採用されているかです。といっても、Kenkoの強化ガラスも光学ガラスに熱処理を加えという記載があったので、各社上位モデルは光学ガラスを採用しているのではないかと思われます。
撥水・防汚コートは水滴や指紋が付着しづらく、付着しても簡単に拭き取れるコーティングが施されているかということです。
外周墨塗りはフィルターガラスのレンズ外周に墨塗り加工を施されているかです。内面反射を防止し、フレアやゴーストの発生を軽減する効果があります。
薄枠はフィルターそのものが薄型なのかそうでないかです。広角レンズに装着した際のケラレを防ぐ効果があります。
専用ケースはフィルターの保管や持ち運びに便利な専用ケースが付属するか否かです。
ローレット(滑り止め)加工はフィルターの外周に溝を掘る加工を施されているか否かです。フィルターの着脱が行いやすくなります。
77mmの価格はAmazonの価格を表記しています。
結局、どれを選べばいいの?
三社の製品を無理矢理ですがまとめた表がこちらです。3社のプロテクターフィルターのスペック一覧表 |
強化ガラス、強度向上、光学ガラスはそれぞれ内容が異なっています。強化ガラス、強度向上は単純にガラスの強度に関してですが、光学ガラスは特に強度が上がってはいないようです。最上位モデルの材質の違いという意味合いで同じ列にしました。
フィルターによる画質劣化を嫌う場合は面反射率が低いモデルを選ぶと良いでしょう。KenkoならZeta QuintシリーズとZetaシリーズ、marumiならEXUSシリーズ、HAKUBAならULTIMAシリーズとXC-PROシリーズが面反射率が低いモデルになっています。
ただ、これらのモデルは透過率の高いガラスを使用しているからか、高価です。特にZeta Quintは他を寄せ付けない圧倒的な高価格。
そもそも画質劣化を嫌うのであれば、保護フィルターは付けないことが一番良いのです。
私、個人の話になってしまいますが保護フィルターに求めることは普段からレンズをある程度ラフに扱えることなので、撥水・防汚コーティングが重要かなと思っています。このコーティングがあると拭き取りも楽になるので重宝するのです。
防汚コートが採用されているモデルはKenkoではZeta Quintのみ、marumiはEXUSシリーズとDHG SUPERシリーズ、HAKUBAはXC-PROシリーズとWPCワイドMCレンズガードフィルターシリーズとなっています。
圧倒的高価ではありますが、お金に余裕があり、最強の性能に惹かれる貴方はZeta Quintが良いかもしれません。
安さで選ぶならWPCワイドMCレンズガードフィルターシリーズに決まりでしょう。撥水・防汚コート採用モデルの中では一番安いです。
コストパフォーマンスで選ぶならEXUSシリーズも良い選択だと思います。Zeta Quintと比べると安いですし、性能にあまり差があるようにも見えません。ジュラルミン枠こそ採用されていませんが、EXUSも強度向上を謳っていますし、強化ガラスほどでないにしろ、丈夫なことには間違いないのではと思います。
ちなみに私はほとんどのレンズにDHG スーパーレンズプロテクトを使用しています(AF-S NIKKOR 50mm f/1.4GだけDHG レンズプロテクトでした)。
単純に手持ちのレンズを購入したときにEXUSシリーズが販売されていなかったこともあるのですが、EXUSレンズプロテクトとDHGスーパーレンズプロテクトの差が帯電防止コーティングと強度向上と遮光線枠が無いこと、僅かと思われる反射率差だけだからです。
いつか、お試しでEXUSシリーズを購入しても良いのですがGX7のキットレンズ、LUMIX G 20mm/F1.7 II ASPH. H-H020A-Sにも、EXUSではなく、DHGスーパーレンズプロテクトを装着しています。
3社を比較してみると、Kenkoとmarumiは製品の性能がわかりやすく、それぞれのシリーズの売りが謳われていたのに対し、HAKUBAはWebサイト上ではイマイチわかりづらいのが難点ですね。下位シリーズは統廃合したほうがユーザーにとっては選びやすいのではと思います。
また、HAKUBAのULTIMAシリーズは同社最上位グレードに関わらず全部入りというわけでもないので、kenkoやmarumiに比べると最上位品を選ぶ動機付が弱い気がします。他製品も他社の同グレード品と比べてしまうと、機能で劣っている印象があります。外周墨塗りなどがの記述がHAKUBAのフィルターにはありません…。はっきりと効果を及ぼすわけでもないと思うのですが、同じお金を出すなら記載されているほうが安心感があります。
個人的にですが、HAKUBAのフィルターはこの性能のわかりづらさ、コストパフォーマンスが改善されない限り、無理に選択する必要もないかなと思います。
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